「米国株、23時間取引へ」——このニュースを見て、「え、株って夜中も動くようになるの?」「私のNISAに何か関係ある?」と思った方へ。
結論を先に言うと、オルカンやS&P500を積み立てている人が、今すぐ何かを変える必要はありません。ただ、これは米国市場の”当たり前”が変わる大きな話。仕組みと影響、そして新しく生まれる注意点を、事実ベースで整理しておきましょう。
この記事では、23時間取引とは何か・いつから始まるのか・日本の投資家にどう効くのかを、図を交えてわかりやすく解説します。
📝 この記事でわかること
- 「23時間取引」とは何か、なぜ24時間ではないのか
- いつから始まるのか(承認状況と開始目標)
- 日本の証券会社の対応状況と、取引できる時間帯
- メリットと、夜間の「薄商い」というデメリット
- NISA積立している人が結局どうすればいいか
そもそも「23時間取引」とは? 24時間じゃないの?
まず言葉から。23時間取引とは、これまで平日の日中しか開いていなかった米国株式市場を、1日23時間・週5日動かせるようにする仕組みです。
きっかけは規制当局の承認でした。2026年4月10日、SEC(米証券取引委員会)がナスダックの「23時間・週5日」取引の計画を承認。これに先立ち、2025年2月にはNYSE傘下のArcaが「22時間」の計画で承認を受けています。
「なぜ24時間ではなく23時間なの?」と思いますよね。理由はシンプルで、1日1時間だけ市場を止めて、その日の取引の清算・システム処理を行うためです。眠らない市場にも、”締め作業”の時間だけは必要というわけです。
【図1】なぜ「24時間」ではなく「23時間」なのか
1日のうち1時間だけ市場を止めて、清算・システム処理を行う
➡ 眠らない市場にも、1日1回の”締め作業”の時間だけは必要。だから23時間です。
いつから始まる? 開始目標は2026年12月6日
気になる時期です。ナスダック・NYSE Arcaともに、2026年12月6日の開始を目標にしています。
ただし、これは「予定」であって「確定」ではありません。24時間に近い取引を回すには、取引データを配信するシステム(SIP)や、清算を担うDTCCといった市場インフラの整備が前提条件になっています。この準備が整わなければ、開始はずれ込む可能性があります。
【図2】ここまでの流れと、開始までのスケジュール
2025年2月
SECがNYSE Arcaの「22時間」計画を承認
2026年4月10日
SECがナスダックの「23時間・週5日」計画を承認
2026年12月6日 /開始目標(確定ではない)
23時間取引スタート(予定)
⚠️ 開始には取引データ配信(SIP)や清算(DTCC)など市場インフラの整備が前提。準備が整わなければ、ずれ込む可能性があります。
「12月6日に必ず始まる」と決めつけず、続報を待つ——これが今の正しいスタンスです。
日本の投資家には、どう関係する?
ここが本題です。日本から米国株を買っている私たちには、どう効くのか。
大前提として、米国市場が23時間になっても、自分が使っている証券会社が対応していなければ、その時間に取引はできません。ここは勘違いしやすいポイントです。
現状、日本のネット証券はすでに”時間外取引”を段階的に広げています。楽天証券は最長16時間、マネックス証券は最大14時間の時間外取引に対応済み。SBI証券も2026年内に最長16時間取引を始め、その先の23時間対応を検討しているとされています。
【図3】日本の主要ネット証券の時間外取引(対応状況)
米国市場が23時間でも、証券会社が対応しないとその時間は取引できない
➡ SBI証券の対応後は、日本時間の18時ごろ〜翌10時ごろまで取引できるイメージ。日本の夜にリアルタイムで動かせます。
各社の対応時間・条件は変更されることがあります。詳細は必ず各証券会社の公式情報をご確認ください。
SBI証券の対応後は、日本時間の18時ごろ〜翌10時ごろまで米国株を取引できるイメージ。日本の夜の時間帯にリアルタイムで動かせるので、時差を気にせず、自分の生活リズムで取引しやすくなるのが最大のメリットです。
メリットとデメリット:便利さの裏に「薄商い」
いいことばかりではありません。取引時間が延びることには、光と影の両面があります。
【図4】取引時間が延びる「光」と「影」
👍 メリット:機会が増える
- 決算・重大ニュースにその場で反応できる
- 時差のハンデが小さくなる
- 自分の生活リズムで取引しやすい
👇 デメリット:夜間は薄商い
- 参加者が少なく売買が細る
- わずかな注文で価格が飛びやすい
- スプレッド(売買の差)が広がりやすい
➡ 「いつでも取引できる」=「いつでも有利に取引できる」ではない。ここを取り違えない。
メリットは「機会が増える」こと。 決算発表や重大ニュースは、これまで日本の深夜や早朝に出ても、市場が開くまで手が出せませんでした。23時間取引なら、ニュースにその場で反応できます。時差のハンデが小さくなるわけです。
デメリットは「夜間の流動性の薄さ」。 ここが専門家の最大の懸念です。参加者が少ない時間帯は、売買が細く(薄商い)なりがち。そうなると、わずかな注文で価格が大きく動いたり、買値と売値の差(スプレッド)が広がったりしやすくなります。実際、ウォール街の関係者の中にも、夜間の価格形成に懸念を示す声があります。
つまり、「いつでも取引できる」=「いつでも有利に取引できる」ではない。ここを取り違えないことが大切です。
NISAで積立している人は、結局どうすればいい?
では、オルカンやS&P500を毎月積み立てている人は、何をすべきか。答えは拍子抜けするほどシンプルです。
【図5】NISA積立している人はどうする?
✔ 基本、何もしなくてOK
投資信託は1日1回の基準価額で買付。市場が23時間動いても積立ルールは変わらない。夜中に張り付く必要なし。
⚠ 注意:短期売買の誘惑
「夜中でも一発当てられるかも」が落とし穴。個別株を時間外でやるなら成行を避けて指値、無理な金額を張らない。
基本、何もしなくてOKです。 投資信託の積立は、あらかじめ決めた日に自動で買い付けられ、その価格は1日1回算出される基準価額で決まります。市場が23時間動こうが、積立のルールは何も変わりません。夜中に張り付く必要は、まったくないのです。
むしろ気をつけたいのは、この便利さに引きずられて、短期売買に手を出すこと。「夜中でも取引できるなら、ニュースで一発当てられるかも」——この誘惑が、いちばんの落とし穴です。前述のとおり夜間は薄商いで、価格が飛びやすい。個別株を時間外でやるなら、成行注文は避けて指値を使う、無理な金額を張らない、が鉄則です。
長期・積立・分散でコツコツやる人にとって、23時間取引は「へえ、便利になるんだ」と眺めておけばいい話。行動を変える理由にはなりません。
ヒロの考え:市場が長く開くほど、”何もしない強さ”が光る
正直に言うと、私はこのニュースを聞いて、少しだけ身構えました。「取引時間が延びたら、つい夜中にスマホを開いて、余計な売買をしてしまうんじゃないか」と。
かつてギャンブルで痛い目を見た私は、“いつでも賭けられる”環境の怖さを知っています。手軽さは、便利さであると同時に、衝動を誘う仕掛けでもある。24時間近く市場が開くというのは、裏を返せば、24時間近く「余計なことをする隙」があるということです。
だからこそ、私は自分の積立を証券会社の自動設定に預けきっています。市場が何時間開こうが、私が触らなければ、淡々と積み上がっていく。市場が長く開く時代ほど、”何もしない仕組み”を持っている人が強い——そう考えています。便利になった夜の市場は、私にとっては「見なくていい画面」が1つ増えただけです。
まとめ
- 23時間取引とは、米国株式市場を1日23時間・週5日動かす仕組み。残り1時間は清算・システム処理のための停止
- 2026年4月10日にSECがナスダックの計画を承認。NYSE Arcaは2025年2月に22時間で承認済み
- 開始目標は2026年12月6日。ただし市場インフラの整備が前提で、確定ではない
- 日本では証券会社が対応して初めて取引可能。楽天16時間・マネックス14時間が対応済み、SBIも2026年内に16時間→23時間を検討
- メリットはニュースに即反応できること。デメリットは夜間の薄商いで価格が飛びやすいこと
- NISAの積立は基準価額で決まるため、影響なし。むしろ短期売買の誘惑に注意。個別株の時間外は指値で慎重に
米国株が眠らなくなっても、私たちの積立は今までどおり。変わるのは市場の営業時間で、変えるべきは自分の投資方針ではありません。便利になった夜の市場を横目に、今日もいつものオルカンを1回積み立てる。それがいちばん、です。
参考文献
- U.S. Securities and Exchange Commission「SR-Nasdaq-2025-109(ナスダックの取引時間拡大に関する承認)」 https://www.sec.gov/files/rules/sro/nasdaq/2026/34-105199.pdf
- New York Stock Exchange「NYSE Extended Hours Trading FAQ(2026年5月)」 https://www.nyse.com/publicdocs/nyse/NYSE_Extended_Hours_Trading_FAQ.pdf
- NYSE「Extended Hours Trading」 https://www.nyse.com/extended-hours-trading
- Simpson Thacher「SEC Approves Nasdaq’s ’23/5′ Trading Proposal」 https://www.stblaw.com/about-us/publications/view/2026/04/29/looking-ahead-to-extended-trading-sec-approves-nasdaq-s-23-5-trading-proposal
※本記事は2026年時点の公表資料・報道にもとづく情報提供を目的としたもので、特定の金融商品の売買や取引を推奨するものではありません。制度・各社の対応・開始時期は今後変更される可能性があります。取引時間や手数料の詳細は、必ずご利用の証券会社の公式情報をご確認ください。投資には元本割れのリスクがあり、最終的な判断はご自身の責任でお願いします。

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