「NISAで持っている投資信託を売ったら、その枠っていつ使えるようになるの?」
これ、意外と知られていません。答えは「翌年」です。今年売っても、今年のうちにその枠は使えません。
そこに動きがありました。2026年8月、金融庁が「売った年のうちに枠が戻るようにしてほしい」と要望を出しています。
ただ、これには続きがあります。去年もまったく同じ要望をして、見送られているんです。
この記事の結論(先に3つ)
- いまは売却した枠が戻るのは「翌年」。金融庁が「当年中に戻す」よう要望した(2026年8月)
- これは要望であって決定ではありません。しかも去年も要望して見送られています
- 仮に実現しても、淡々と積み立てている人には関係ありません。売る理由が増えるわけではない
いまのルール:売っても枠が戻るのは「翌年」
NISAには年間の投資枠と、生涯の非課税保有限度額があります。この限度額は、商品を売れば復活します。ここまでは知っている方も多いと思います。
問題は「いつ」です。
【図1】売却したあと、枠が戻るタイミング
| タイミング | できること |
|---|---|
| 売った年 | 枠は戻りません。その年はもう使えない |
| 翌年の1月 | 売った分の枠が復活し、再び投資できる |
※戻ってくるのは「買ったときの値段(簿価)」の分です。値上がりした分まで戻るわけではありません。
たとえば100万円で買った投資信託が150万円に育って、それを売ったとします。翌年に戻ってくる枠は150万円ではなく100万円です。ここも誤解しやすいところですね。
金融庁が要望した2つの変更(2026年8月)
2026年8月、金融庁が「令和9(2027)年度 税制改正要望」を公表しました。NISAに関わるのは次の2つです。
【図2】金融庁が要望した内容
| 要望 | 中身 |
|---|---|
| ① 非課税保有限度額の 当年中復活 | 売却した枠を、翌年ではなくその年のうちに復活させる |
| ② つみたて投資枠の 対象商品の要件整備 | 指定指数に連動しない公募投信を、ETFの対象に追加する。要件は純資産50億円以上・信託開始から5年経過・資金流入超など |
出典:金融庁「令和9(2027)年度 税制改正要望について」(2026年8月)
①がいちばん影響が大きい話です。実現すれば、売却した同じ年に再投資できるようになります。
【ここが大事】去年も同じ要望をして、見送られています
ニュースだけ見ると「NISAがまた拡充される」と読めます。でも、少し引いて見ると景色が違います。
【図3】去年の要望と、その結果
| 2025年8月 令和8年度の要望 | 当年中復活を要望 |
| 2025年12月 税制改正大綱で決着 | こどもNISAの創設 → 決定 つみたて枠の商品追加 → 決定 当年中復活 → 記載なし(見送り) |
| 2026年8月 令和9年度の要望 | 当年中復活を再び要望 |
つまり2年連続の要望です。去年は通りませんでした。今年通る保証もありません。
去年決まったのはこどもNISA(0〜17歳・年間60万円・非課税保有限度額600万円・2027年開始予定)と、つみたて投資枠の商品追加でした。当年中復活は、そこに入らなかったんです。
期待するなとは言いません。ただ、「決まった」と「要望した」はまったく別です。ここを混ぜて読むと、判断を誤ります。
いつ決まるのか
【図4】決まるまでの流れ
| 時期 | 何が起きるか |
|---|---|
| 2026年8月 | 金融庁が要望を公表 ← いまここ |
| 2026年12月ごろ | 税制改正大綱で決着。ここで入らなければ、また見送り |
| 2027年以降 | 大綱に入れば、法改正を経て施行 |
答えが出るのは12月です。それまでは、どのメディアが何と書いても「決まっていない」が正解です。
実現したら、何が変わる?
仮に当年中復活が実現したとして、変わるのはこれくらいです。
- 売却して現金が必要になった後、同じ年のうちに投資へ戻せる
- 商品を乗り換えたいとき、翌年まで待たなくていい
- ただし戻るのは簿価(買ったときの値段)のまま。ここは変わりません
- 年間の投資枠(つみたて120万円・成長240万円)を超えて投資できるようになるわけでもありません
つまり「便利になる」であって「有利になる」ではないんですね。
わが家はどうするか
正直に言うと、実現してもしなくても、わが家のやることは変わりません。
理由は単純です。そもそも売らないから。
わが家は毎月インデックスファンドを積み立てて、あとは放置しています。売るのは、お金が本当に必要になったときだけ。だから「枠がいつ戻るか」を気にする場面がほとんどありません。
むしろ、少し警戒しています。「売ってもすぐ枠が戻る」は、売買を増やす方向に効くからです。
いまは「売ったら翌年まで枠が戻らない」というブレーキがあります。これが結果的に、慌てて売ることを止めてくれている面がある。そのブレーキが外れたとき、「ちょっと利確して、また買い直そう」と考える人は確実に増えます。
そして、そういう売買を繰り返した人の成績が、淡々と積み立てた人より良くなるとは限りません。
制度が便利になるのは歓迎です。でも制度が変わったから自分のやり方を変える、というのは順番が違うと思っています。人と比べず、去年の自分と比べる。そこは制度と関係なく続けます。
まとめ
- いまは売却した枠が戻るのは翌年。戻るのは簿価分
- 2026年8月、金融庁が「当年中復活」を要望。あわせてつみたて投資枠の商品要件の整備も
- 去年も同じ要望をして見送られています。2年連続の要望で、決着は2026年12月の大綱
- 実現しても「便利になる」だけ。売買を増やす理由にはなりません
制度のニュースは、読むと何かしなきゃいけない気になります。でも大抵の場合、いちばん正しい対応は「何もしない」です。12月にまた続報を書きます。
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出典・ご注意
本記事は、金融庁「令和9(2027)年度 税制改正要望について」(2026年8月公表)および「令和8(2026)年度税制改正大綱における金融庁関係の主要項目」(2025年12月26日閣議決定)にもとづいています。いずれも2026年9月3日に確認しました。
本記事で扱う「当年中復活」は要望段階であり、決定事項ではありません。今後の税制改正の過程で内容が変わる、または見送られる可能性があります。また本記事は特定の金融商品の購入や売却を勧めるものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。最新の制度内容は金融庁および各金融機関の公式情報をご確認ください。

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