2026年8月1日から、高額療養費制度の自己負担上限が引き上げられます。ニュースを見て「医療費の負担が増えるなら、やっぱり民間の医療保険に入らなきゃ…」と不安になった人も多いはずです。
でも、結論から言います。多くの人にとって、民間の医療保険は今回もやっぱり”いらない”。むしろ、その保険料を自分で貯めて、投資で増やすほうが賢い——これが、わが家の考え方です。この記事では、その理由を数字で示しながら、正直に例外まで解説します。
📝 この記事でわかること
- 2026年8月からの高額療養費の引き上げ額(区分別)
- それでも民間の医療保険がいらない理由
- 保険料を投資に回すといくらになるか
- 逆に、保険を検討したほうがいい人
そもそも高額療養費とは?2026年8月からいくら上がる?
高額療養費とは、1か月(1日〜末日)の医療費の自己負担が一定の上限を超えたら、超えた分が戻ってくる公的制度です。日本の医療の”神制度”とも言われ、健康保険に入っていれば誰でも使えます。
2026年8月から、この上限額が段階的に引き上げられます。まずは全体像を見てください。
【図1】2026年8月〜 高額療養費の月額上限(69歳以下)
区分ア〜ウは「+(医療費−一定額)×1%」が別途加算されます
| 区分/年収目安 | 旧(〜26年7月) | 新(26年8月〜) | 増加 |
|---|---|---|---|
| ア/約1,160万円〜 | 252,600円+ | 270,300円+ | +17,700 |
| イ/約770〜1,160万 | 167,400円+ | 179,100円+ | +11,700 |
| ウ/約370〜770万 | 80,100円+ | 85,800円+ | +5,700 |
| エ/〜約370万 | 57,600円 | 61,500円 | +3,900 |
| オ/住民税非課税 | 35,400円 | 36,900円 | +1,500 |
※2027年8月には第2段階として、さらに引き上げ(現行比 最大+38%程度)が予定されています。
ポイントは、多くの人が当てはまる区分ウ・エでも、増額は月+約4,000〜5,700円ということ。もちろん負担増はイヤですが、「これで家計が破綻する」というレベルではありません。しかも今回、長期治療者を守る「年間上限」も新設されました。制度そのものは、まだ十分に強力なのです。
それでも民間の医療保険が”いらない”5つの理由
では、なぜ上限が上がってもなお「民間の医療保険はいらない」と言えるのか。理由は5つあります。
【図2】民間の医療保険が”いらない”5つの理由
① 公的保険がそもそも手厚い
高額療養費で医療費に上限があるうえ、会社員なら傷病手当金もあります。病気やケガで働けない間、給料の約3分の2が、最長1年6か月支給される制度です。つまり「医療費」だけでなく「収入減」までカバーされる。日本の公的保険は、世界的に見てもかなり手厚いのです。
② 保険は”低確率×大損失”に備えるもの
保険の正しい使いどころは、「めったに起きないが、起きたら貯金では到底払えない」リスク——たとえば一家の大黒柱の死亡や、重度障害です。月数万円〜十数万円の医療費は、貯蓄で十分に払える範囲。わざわざ手数料を払って保険で備える対象ではありません。これを「貯蓄による自己保険」と言います。
③ “保険で貯蓄”はしない(貯蓄型はNG)
いちばんやってはいけないのが、終身保険や貯蓄型の民間の医療保険で“保障と貯蓄をセット”にすること。保険料が割高なうえ、途中解約すると元本割れしやすく、運用効率もNISAに大きく劣ります。保障は掛け捨てで最小限、お金を増やすのはNISAで——この2つをきっぱり分けるのが鉄則です。
④ 保険料を投資に回すと、大きく育つ
これがいちばん伝えたい点。民間の医療保険に月5,000円払うなら、その5,000円を積立投資に回したらどうなるか——次の章で図解します。
⑤ 貯蓄は”何にでも使える”
保険金は「その病気・その入院」でしか受け取れません。でも、自分で貯めたお金は、医療にも、失業にも、教育にも、老後にも使えます。使い道が限定されない現金のほうが、はるかに応用が利くのです。
「保険料を貯めて増やす」といくらになる?
具体的に見てみましょう。仮に民間の医療保険に月5,000円払っているとします。これを解約して、同じ5,000円を積立投資(年5%想定)に回すと——。
【図3】民間の医療保険の月5,000円を”投資”に回すと?
毎月5,000円を30年間・積立投資した場合の概算(元本180万円)
病気でも健康でも、まとまった現金が自分に残る
30年後には、約416万円(元本180万円+運用益 約236万円)。もし月1万円払っていたなら、単純に倍の約830万円です。
保険なら、病気にならなければ基本的に掛け捨て。でもこの方法なら、病気になってもならなくても、まとまった現金が自分の手元に残ります。「もしものときの備え」と「将来の資産」を、同じお金で両取りできるわけです。これこそ、保険料を貯蓄・投資に回す最大のメリットです。
もし入るなら”掛け捨て”一択。貯蓄型をすすめない理由
「それでもゼロは不安」という人へ。入るとしても、選ぶのは”掛け捨て”の安い保険だけにしてください。終身保険や貯蓄性のある保険(貯蓄型)は避けるのが鉄則です。理由は3つ。
- 保険料が割高:保障だけの掛け捨てに比べ、貯蓄部分がある分、毎月の負担が数倍になることも。
- 途中解約で元本割れ:貯蓄型は長期継続が前提。家計が苦しくて解約すると、払った額を下回りがちです。
- 運用効率がNISAに負ける:保険会社の手数料が乗る分、同じお金をNISAで運用したほうが増えやすい。
つまり、“保障”と”貯蓄”を1つの商品に混ぜると、両方が中途半端になります。公的保険をベースに、足りない保障は掛け捨てで薄く、お金を増やすのはNISAで——この”分業”が、いちばん合理的です。
ただし、こんな人は”例外”
とはいえ、全員に当てはまる話ではありません。フェアに、民間の医療保険を検討する余地がある人も挙げておきます。
- 生活防衛資金がまだ無い人:貯蓄ゼロだと、入院費すら払えずピンチに。当面の現金が貯まるまでは、掛け金の安い保険で”つなぐ”のはアリです。
- 自営業・フリーランス:会社員と違い傷病手当金がありません。長期間働けなくなったときの収入減が大きいので、就業不能への備えは検討価値があります。
- 差額ベッド代・先進医療が気になる人:これらは高額療養費の対象外。どうしても不安なら、その部分だけを掛け捨ての特約で最小限にカバーする手も(ここでも貯蓄型はNG)。
大事なのは、「なんとなく不安だから」ではなく、“公的保険でカバーできない部分は何か”を見極めて、必要なところだけ掛け捨てで最小限にという考え方です。
わたしたちがやるべきこと
高額療養費の引き上げは、正直、うれしいニュースではありません。でも、慌てて高い保険に飛びつくのは逆効果。やるべきことは、いつもと同じ順番です。
まずは支出の見える化で、今入っている保険や固定費を棚おろし(→ 家計の自動化はマネーフォワードで)。次に、生活防衛資金として現金を厚めに確保。そのうえで、余ったお金をNISAでコツコツ投資に回す(→ わが家の運用実績はこちら)。この順番を守るだけで、”保険に頼らなくても大丈夫”な家計に近づいていきます。
まとめ
- 2026年8月から高額療養費の上限が引き上げ。でも多くの人(区分ウ・エ)で増額は月+約4,000〜5,700円
- それでも民間の医療保険は多くの人に不要。公的保険(高額療養費+傷病手当金)が手厚いから
- 保険は「低確率×大損失」に備えるもの。月数万円の医療費は貯蓄で自己保険できる
- 保険料 月5,000円を投資に回せば、30年で約416万円。病気でも健康でも現金が残る
- 入るとしても掛け捨てで最小限。貯蓄型保険は割高・解約で元本割れ・運用効率も劣るのでNG
- ただし生活防衛資金ゼロの人・自営業などは例外。公的保険で足りない部分だけ掛け捨てで
「不安だから保険」ではなく、「公的保険をベースに、足りない分だけ掛け捨てで薄く備え、お金はNISAで増やす」。保障と貯蓄を分けるのが、いちばんお金の貯まる守り方です。
参考文献
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html
- 日本経済新聞「高額療養費の月額上限、8月からの引き上げ決定」 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA218NB0R20C26A8000000/
- 全国健康保険協会「傷病手当金」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat310/sb3040/r139/
※本記事は2026年8月時点の公的情報に基づく一般的な情報提供であり、特定の保険・金融商品の加入や解約を推奨するものではありません。保険の要否は、家族構成・貯蓄額・就労形態など個人の状況によって異なります。制度の詳細は厚生労働省等の公式情報をご確認のうえ、最終的な判断はご自身の責任でお願いします。投資には元本割れのリスクがあります。

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