「最近、食費が上がった気がする」「同じものを買っているのになぜか財布が軽い」——そう感じていませんか?
気のせいではありません。2022年ごろから日本でも本格的な物価上昇が始まり、2025年には消費者物価指数(CPI)の上昇率が3.6%と、G7(主要7か国)の中で最も高い水準になりました。
でもここで大事な視点があります。「インフレ(物価上昇)は悪いことではなく、本来は普通のことです。」異常だったのは、過去30年間の日本のデフレ(物価が下がり続ける状態)でした。
この記事では、なぜ今インフレが来たのかを、事実とデータをもとにわかりやすく解説します。
まず知っておきたい:インフレ・デフレとは何か
インフレ(インフレーション)とは、モノやサービスの値段が全体的に上がり続ける状態のことです。100円だったものが110円、120円になっていく——それがインフレです。
反対に、デフレ(デフレーション)とは、物価が下がり続ける状態です。一見お得に見えますが、モノが売れなくなる→企業の収益が下がる→給料が上がらない→消費しなくなる、という悪循環につながります。
※消費者物価指数(CPI):私たちが日常的に買うモノやサービスの価格を数値化したもの。総務省が毎月発表しています。
日本だけがデフレだった30年間——これが異常だった
世界を見ると、物価は基本的に毎年少しずつ上がっていきます。アメリカやイギリスでは過去30年で物価が約2倍になっています。年率2%前後の物価上昇は、経済が健全に成長している証拠として「普通のこと」として受け入れられています。
一方、日本はどうだったか。1990年代のバブル崩壊以降、日本の物価はほとんど変わりませんでした。「失われた30年」と呼ばれるこの時代、日本人は「物の値段は変わらないもの」「給料も上がらなくて当然」という感覚に慣れてしまいました。
※バブル崩壊:1980年代後半に土地や株が異常に値上がりし、1990年代初頭に急落した出来事。これ以降、日本経済の低迷が続きました。

日本経済新聞によれば、「米英の価格は30年で2倍になったが、日本はほぼ横ばい」(2023年2月報道)。この事実が、いかに日本のデフレが世界的に見て「異形」だったかを示しています。
つまり、今起きているインフレへの転換は「日本がようやく世界標準に近づいている」とも言えます。異常だったのは過去のデフレであり、物価が上がること自体は経済の自然な姿に戻ってきている、ということです。
なぜ今、インフレになったのか?3つの原因

原因①:円安による輸入コストの上昇
日本は食料やエネルギーの多くを海外から輸入しています。食料の自給率はカロリーベースで約38%(農林水産省)。つまり食べているものの6割以上が輸入品です。
円安になると、ドルで取引される輸入品の値段が上がります。たとえば1ドル=100円のときに1ドルで買えた小麦が、1ドル=150円になると同じ小麦を買うのに150円かかります。これが食品価格の上昇につながっています。
※円安:円の価値が下がること。1ドル=100円から150円になるのは「円の価値が下がった=円安」。輸入品が割高になります。
原因②:エネルギー価格の上昇
2022年のロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、世界的にエネルギー(石油・天然ガス・電力)の価格が急上昇しました。日本はエネルギーの多くを輸入に頼っているため、その影響をまともに受けました。
2025年のデータでは、日本のエネルギー価格は前年比+9.3%の上昇。これはG7の他の国と比べても突出して高く、欧米ではむしろエネルギー価格が押し下げ方向に動いていたのと対照的です。(出典:第一生命経済研究所)
原因③:賃上げコストの転嫁
2023年以降、日本でも人手不足を背景に賃上げの動きが広がりました。2026年の春闘(※)では賃上げ率が5.08%と、1990年代以来の高水準に。
しかし企業にとっては人件費が上がることで、その分をモノやサービスの値段に上乗せ(コスト転嫁)する必要があります。これが食品・外食・サービス業などの値上げにつながっています。
※春闘(しゅんとう):毎年春に行われる、労働組合と企業の間の賃金交渉のこと。日本全体の賃金水準を決める重要な交渉です。
賃金は上がっているのに、なぜ苦しいのか
「春闘で5%賃上げと聞いた。でも全然豊かになった気がしない」——そう感じている方は正しいです。
ここで重要なのが「実質賃金」という概念です。
| 用語 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 名目賃金 | 実際に受け取る給与の金額 | 月給30万円→31.5万円(+5%) |
| 物価上昇率 | モノの値段が上がる割合 | +3.6% |
| 実質賃金 | 物価を差し引いた「本当の給与」 | +5% − 3.6% = 実質 +約1.4% |
表面上は5%賃上げでも、物価が3.6%上がっていれば実質的な生活水準の向上は約1.4%に過ぎません。しかも実際の賃上げの恩恵は大企業や正社員に偏っており、パートタイム労働者や中小企業では賃金の伸びがより小さく、2025年には実質賃金が2ヶ月連続でマイナスになりました。(出典:厚生労働省)
※実質賃金:物価の変動を考慮した「実際の購買力」のこと。給料が増えても、それ以上に物価が上がれば実質賃金はマイナスになります。
インフレ時代に「何もしない」のは損をし続けること
ここが最も重要なポイントです。
銀行の普通預金金利は現在(2026年5月時点)でも年0.1%前後。物価が毎年3%以上上がっているのに、預金は0.1%しか増えない。これは実質的に、毎年お金の価値が目減りしているのと同じです。
| 年間の増加率 | 100万円の10年後 | |
|---|---|---|
| 銀行預金 | +0.1% | 約101万円 |
| 物価上昇 | +3.0%(想定) | — |
| 物価調整後の実質価値 | ▲2.9% | 約74万円相当の購買力 |
預金口座の数字は増えていなくても、買えるものが減っていく。これがインフレ時代に「貯金だけ」でいることのリスクです。
反対に言えば、物価上昇率(年3%前後)を上回る運用ができれば、資産は実質的に守られる、あるいは増えるということでもあります。歴史的に見て、全世界株式インデックスファンド(※)の年平均リターンは5〜7%程度とされており、物価上昇率を上回ってきた実績があります。
※全世界株式インデックスファンド:世界中の株式に少額から分散投資できる金融商品。「オルカン(オール・カントリー)」とも呼ばれます。NISAで購入できます。
まとめ:インフレは「敵」ではなく「ルールが変わったサイン」
- 日本のデフレ30年は世界的に見て異常だった。物価が上がることは経済の自然な姿
- 今のインフレの主な原因は「円安」「エネルギー高」「賃上げコスト転嫁」の3つ
- 賃金が上がっても物価の上昇に追いつかず、実質賃金はマイナスになることもある
- 銀行預金だけでは、インフレ分だけ毎年お金の価値が目減りする
- 物価上昇率を上回る運用(少額投資)を始めることが、インフレ時代の資産形成の基本
物価が上がるのは食品・光熱費だけではありません。次回は「金利上昇が住宅ローンや日常生活にどう影響するか」を解説します。インフレと金利の関係を知ることで、お金の守り方が見えてきます。
参考文献・出典
- 第一生命経済研究所「気がつけば、日本の物価上昇率はG7最高」
- 内閣府「物価・賃金の動向〜好循環の実現に向けた動き〜」
- 日本経済研究センター「2026年の日本経済を考える 物価編」
- JBpress「なぜ日本は30年デフレからインフレ基調に転換したのか」
- 日本経済新聞「世界で異形の30年デフレ 米英の価格2倍」
勉強しようなーーーー
さいならーーーーーーーーーーーーーーーーー
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